一級建築士 過去問
令和8年(2026年)
問17 (学科1(計画) 問17)

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問題

一級建築士試験 令和8年(2026年) 問17(学科1(計画) 問17) (訂正依頼・報告はこちら)

建築物(所在地)の保存再生に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
  • 旧富岡製糸場西置繭所(群馬県)は、1階の内部に壁と天井をガラスで囲った鉄骨造の部屋(ハウス・イン・ハウス)による耐震補強を行うことで、壁や天井に残された創建時からの痕跡がガラス越しに見えるようにするなど、補強・保存修理、整備活用、耐震補強が行われた。
  • 前川國男自邸(東京都)は、建築資材の入手が困難な時期に竣工した木造住宅であり、鉄筋コンクリート造の自邸に改築する際に解体され、長期間保管されていたが、設計者の没後に、江戸東京たてもの園(東京都)に移築復元が行われた。
  • 香川県庁舎旧本館・東館(香川県)は、コンクリート打放し仕上げでありながら日本の伝統的な木造建築をイメージさせる柱梁の表現や、1階にある階高の高いピロティとロビーを継承しながら、免震レトロフィットによる耐震性能の向上が図られた。
  • アートプラザ(大分県)は、連続するのこぎり屋根をもつ平家建ての紡績工場の棟の一部を撤去してできたオープンスペースを中心に、ギャラリー等からなる芸術文化の複合施設へと再生が行われた。

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この過去問の解説 (2件)

01

最も不適当なのは、「アートプラザ(大分県)は、連続するのこぎり屋根をもつ平家建ての紡績工場の棟の一部を撤去してできたオープンスペースを中心に、ギャラリー等からなる芸術文化の複合施設へと再生が行われた。」という記述です。

アートプラザの前身は紡績工場ではなく、磯崎新が設計した「大分県立大分図書館」です。図書館の移転後、建物を生かして芸術文化の複合施設へ再生されました。これに対して、紡績工場やのこぎり屋根を生かして複合施設へ再生した事例は、岡山県の「倉敷アイビースクエア」です。

選択肢1. 旧富岡製糸場西置繭所(群馬県)は、1階の内部に壁と天井をガラスで囲った鉄骨造の部屋(ハウス・イン・ハウス)による耐震補強を行うことで、壁や天井に残された創建時からの痕跡がガラス越しに見えるようにするなど、補強・保存修理、整備活用、耐震補強が行われた。

適当な記述です。

富岡製糸場の西置繭所では、歴史的な建物をできるだけそのまま残しながら、安全性を高め、見学やイベントにも利用できるようにする工事が行われました。

1階には、既存の建物の内側に新しい鉄骨の骨組みを設け、その壁と天井をガラスで囲う「ハウス・イン・ハウス」という方法が採用されています。この鉄骨は耐震補強の役割も果たしています。

ガラスを使うことで、古い建物の壁や天井を隠してしまわず、建物に残された操業の歴史や当時の痕跡を見ることができます。つまり、古い部分を保存しながら、新しい耐震構造と活用のための空間を内部につくった点が特徴です。富岡市も、保存修理、整備活用、耐震対策を一体的に行った事例として説明しています。

選択肢2. 前川國男自邸(東京都)は、建築資材の入手が困難な時期に竣工した木造住宅であり、鉄筋コンクリート造の自邸に改築する際に解体され、長期間保管されていたが、設計者の没後に、江戸東京たてもの園(東京都)に移築復元が行われた。

適当な記述です。

前川國男邸は1942年に建てられた木造住宅です。当時は戦時中で建築資材が不足し、住宅の規模にも制限がある時期でした。江戸東京たてもの園も、建築資材の入手が難しい時期に完成した住宅であると説明しています。

その後、同じ敷地に鉄筋コンクリート造の新しい自邸を建てることになり、木造の旧自邸は解体されました。ただし、部材は捨てられず、軽井沢の別荘で長期間保管されていました。

前川國男は1986年に亡くなりましたが、残されていた部材を使って江戸東京たてもの園に復元され、1997年から公開されています。古い建築物をその場所に残す「現地保存」ではなく、部材を別の場所へ運んで建て直す「移築復元」の事例です。

選択肢3. 香川県庁舎旧本館・東館(香川県)は、コンクリート打放し仕上げでありながら日本の伝統的な木造建築をイメージさせる柱梁の表現や、1階にある階高の高いピロティとロビーを継承しながら、免震レトロフィットによる耐震性能の向上が図られた。

適当な記述です。

香川県庁舎旧本館・東館は、丹下健三の代表的な建築です。鉄筋コンクリート造ですが、柱と梁をはっきり見せる構成によって、日本の伝統的な寺院などの木造建築を思わせるデザインとなっています。

また、1階には大きく開かれたピロティやロビーが設けられています。これは、県民が利用しやすい「開かれた庁舎」をつくろうとした設計の重要な特徴です。香川県は、こうした建築的な価値をできるだけ損なわない方法で耐震改修を行いました。

耐震改修では、建物の基礎の下に免震装置を設ける方法が採用されています。既存の建物を残しながら免震性能を加える方法であり、一般に「免震レトロフィット」と呼ばれます。外観や内部空間の特徴を大きく変えずに、耐震性能を高めていることがポイントです。

選択肢4. アートプラザ(大分県)は、連続するのこぎり屋根をもつ平家建ての紡績工場の棟の一部を撤去してできたオープンスペースを中心に、ギャラリー等からなる芸術文化の複合施設へと再生が行われた。

不適当な記述です。

アートプラザは、紡績工場を再生した建物ではありません。

アートプラザの建物は、磯崎新の設計によって1966年に「大分県立大分図書館」として完成したものです。鉄筋コンクリート造の地上3階、地下1階の建物で、コンクリート打放しの中空梁や大きな壁、スキップフロアを使った空間構成などが特徴です。

県立図書館が移転した後、磯崎新自身による改修を経て、ギャラリーや美術創作活動の場、磯崎新の建築作品を紹介する展示室などをもつ「アートプラザ」として再生されました。したがって、「芸術文化の複合施設へ再生された」という部分は合っていますが、その前身を紡績工場としている点が誤りです。

「連続するのこぎり屋根をもつ紡績工場を再生した」という特徴は、岡山県の「倉敷アイビースクエア」に当てはまります。倉敷アイビースクエアは、1889年に建設された倉敷紡績所の工場を再利用した施設で、のこぎり屋根など工場時代の特徴を残しながら、宿泊施設や文化施設などを備えた複合施設として再生されています。

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02

この問題は、近代建築や歴史的建造物における保存修理・耐震改修手法、文化的価値の継承手法、ならびに移築復元における建築家の経歴や実際の歴史的経緯に関する正確な知識が問われています。
 

選択肢1. 旧富岡製糸場西置繭所(群馬県)は、1階の内部に壁と天井をガラスで囲った鉄骨造の部屋(ハウス・イン・ハウス)による耐震補強を行うことで、壁や天井に残された創建時からの痕跡がガラス越しに見えるようにするなど、補強・保存修理、整備活用、耐震補強が行われた。

〇

旧富岡製糸場西置繭所(群馬県)とは、繰糸所(そういじょ)と直交して建てられ、製糸の原料となる繭(まゆ)を乾燥・貯蔵するための大規模な倉庫として使われました。2020年に約6年にわたる保存整備工事を行い、1階部分には、建物を傷めないよう耐震補強を施した鉄骨フレームとガラスのボックス(ハウス・イン・ハウス構造)が組み込みました。

選択肢2. 前川國男自邸(東京都)は、建築資材の入手が困難な時期に竣工した木造住宅であり、鉄筋コンクリート造の自邸に改築する際に解体され、長期間保管されていたが、設計者の没後に、江戸東京たてもの園(東京都)に移築復元が行われた。

〇

建築家・前川國男が1942年に東京都品川区上大崎に建てた自邸(現在は東京都小金井市の江戸東京たてもの園に移築・保存)は、戦時下の資材統制という厳しい制約の中で、日本伝統美とモダニズムを融合させた木造住宅の傑作です。外観は和風の切妻屋根で正面が大きな開口部になっています。内部は吹き抜けの居間を中心に書斎と寝室などを配置しています。

選択肢3. 香川県庁舎旧本館・東館(香川県)は、コンクリート打放し仕上げでありながら日本の伝統的な木造建築をイメージさせる柱梁の表現や、1階にある階高の高いピロティとロビーを継承しながら、免震レトロフィットによる耐震性能の向上が図られた。

〇

香川県庁舎旧本館・東館(香川県)は、丹下健三の設計による香川県庁舎旧本館は、日本の伝統木造建築の意匠(柱・梁の表現や1階のピロティ、大空間のロビー)を忠実に継承しつつ、歴史的意匠を損なわずに耐震性能を飛躍的に向上させるため、免震レトロフィット(免震構造化改修)が実施されました。
 

選択肢4. アートプラザ(大分県)は、連続するのこぎり屋根をもつ平家建ての紡績工場の棟の一部を撤去してできたオープンスペースを中心に、ギャラリー等からなる芸術文化の複合施設へと再生が行われた。

×

アートプラザ(大分県)は、1996年、大分県立図書館が新築・移転したことで、本建物は図書館としての役目を終え、一時は解体も検討されましたが、建物の建築的価値を惜しむ声や市民運動が高まり、大分市が取得して再生活用(リノベーション)が決定しました。磯崎新氏自らの監修のもと、市民のための市民ギャラリーや作業スタジオ、そして磯崎新氏の建築模型や資料を展示する「磯崎新建築展示室」を備えた芸術文化の複合施設(アートプラザ)として蘇りました。問題文は倉敷アイビースクエアの説明となっています。

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